前年度までに38.5%高ショ糖食を野生型マウスに15週間投与すると経口糖負荷試験において耐糖能が悪化するが、GLP-1アナログ製剤やDPP-4阻害薬を高ショ糖負荷マウスに投与すると糖負荷時のインスリン分泌亢進により耐糖能が改善することを報告した。 本年度は(1)膵臓の形態解析(2)腸管のインスリンシグナル解析を中心に行った。 HE染色にて膵島の大きさの検討を行ったが、通常食群、高ショ糖食群、高ショ糖食+DPP-4阻害薬群で差は見られなかった。また膵臓のインスリン含有量を測定したが、3群間で差は見られなかった。すなわち、DPP-4阻害薬を慢性的に投与すると個々の膵β細胞の大きさは変化させないが、グルコース応答性インスリン分泌を改善させることにより、高ショ糖食負荷に伴う耐糖能障害が改善すると考えられた。 インスリン負荷試験によるインスリン感受性は、3群間で差は見られなかった。しかしながら、フルクトース食負荷では一般的にインスリン抵抗性を来すため、腸管上皮レベルでインスリンシグナル低下がみられるかどうか、高ショ糖食負荷マウスの空腸のAktのリン酸化やErkのリン酸化をWestern-Blot法にて評価を行ったが、通常食と比較し差は見られなかった。DPP-4阻害薬慢性投与により、高ショ糖食負荷に伴うグルコース特異的糖輸送体SGLT1の発現上昇を抑制できず、DPP-4阻害薬は腸管のグルコース吸収に関しては、影響を及ぼさないと考えられた。DPP-4阻害薬は、近年膵外作用として肝臓や骨格筋に対する作用が報告されているがインスリン作用がどのくらい寄与しているかは議論の的となっている。今後、高ショ糖食負荷に伴う耐糖能悪化に対するDPP-4阻害薬による改善の機序に関して各組織レベルでの解明が待たれる。
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