糖尿病家族歴を有するインスリン抵抗性被検者で観察されるミトコンドリア機能低下の原因として新規調節因子Aの発現低下が示唆される。新規調節因子Aの発現低下が遺伝によるものか環境因子によるものかを検証する事が本研究の目的である。網羅的スクリーニングにより同定された候補遺伝子Aはこれまでの我々の検討によると糖尿病家族歴を有するインスリン抵抗性被検者の骨格筋で蛋白発現とmRNAが約50%低下しており、ミトコンドリア密度と相関している事が明らかとなった。 (1)規調節因子Aの一塩基多型(SNP)と糖尿病の関係を検討する。 新規調節因子A遺伝子は最近のゲノムワイド関連解析(GWAS)によって糖尿病発症に関連することが報告された遺伝子には含まれないものの、糖尿病・高血圧家系の連鎖解析によりLODスコア3前後として複数の報告が存在している。そこで、理化学研究所 前田士郎博士らの協力の下、新規調節因子A近傍のSNPを検索し、2つの糖尿病疾患感受性アリルを見出した(未発表)。2つのSNPはいずれも新規調節因子Aのintron-1に存在し、コンピュータによる予測によりプロモーターあるいはエンハンサー活性を有する部位に存在する事が示唆された。そこでSNP周辺のDNA断片及びプロモーター領域をクローニングし、プロモーター活性を検討した。その結果SNPによりプロモーター活性に差があることが分かった。 2)家族歴を有するインスリン抵抗性被検者が実際に疾患感受性アリルを有するかどうかを確認する。 スクリーニングに用いた被検者(約300名の健常、若年、正常BMI)のDNAをsequenceして疾患感受性アリルの頻度が実際にインスリン抵抗性被検者において高いかどうか検討する。本実験については次年度持越しとなった。
|