インスリン抵抗性被検者ではミトコンドリア密度の低下があるにもかかわらずPGC-1とその下流分子のmRNA発現には低下を認めなかったことから、PGC-1以外の因子によってミトコンドリア密度が調節されている可能性が示唆されたためDNA micro arrayにより新規ミトコンドリア機能調節因子A(lipoprotein lipase)を同定した。この調節因子の発現が、インスリン抵抗性被検者の骨格筋で低下していたため、プロモーター領域のSNP検索を行った。この結果、2つのSNPが糖尿病患者で有意に多いとの結果を得た。このため、SNP周辺の遺伝子配列をクローニングし、ルシフェラーゼアッセイを行った結果、SNPによりプロモーター活性に差があることが明らかとなった。しかしながら、被患者の数を増やした上でGWASにより再検討した結果、同部位のSNPは糖尿病発症と直接関係ないとの結果を得た。次に、新規ミトコンドリア機能調節因子AがPPARDを介してミトコンドリア密度を調節することを見出した。PPARDの活性化剤はインスリン抵抗性の改善や、持久的運動能力を高める事がが知られる。我々の実験結果でも、多価不飽和脂肪酸やPPARDの活性化剤が脂肪酸酸化に関連したCPT1bやPDK4の転写を活性化する事、PPARDノックダウンはミトコンドリア密度を低下させることが観察された。
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