研究概要 |
脂肪組織肝臓、膵臓に発現するβKlothoは肝臓ではFGF19の受容体構成因子としてはたらきコレステロールからの胆汁酸合成を制御する(Ito S, et al. Mech Dev, 2000, Ito S, et al. J Clin In vest, 2005, Tomiyama K et al. Proc Natl Acad Sci USA 2010)が、脂肪細胞における機能は未だ不明である。平成22年度の本課題の研究推進により、βklothoノックアウトマウスが標準食下では野生型同胞マウスと比較して脂肪細胞サイズの増大と脂肪組織重量の増加を示す一方、高脂肪食による体脂肪量の増加には抵抗性を示すことが示された。次にβklothoノックアウトマウスの臀部皮下脂肪組織由来の初代培養前駆脂肪細胞にインスリン、デキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチン、プロスタグランディンJ_2を添加することで脂肪細胞への分化を誘導し、その表現型を解析した。その結果、βKlothoの有無は分化誘導の結果生じる脂肪細胞の数、形態、Oil Red Oにより検出される脂質の蓄積、脂肪細胞の分化関連遺伝子群(C/EBP α、PPARγ、aP2、アディポネクチン等)の発現レベルには影響を及ぼさないことが示された。βKlothoのmRNAおよびタンパク質は脂肪細胞の成熟後期に著しく発現が増加することからβKlothoは脂肪細胞の分化過程ではなく、成熟脂肪細胞の機能により関連するものと考えられた。さらに本研究により、新たに脂肪細胞の細胞膜においてβKlothoと結合するアミノ酸トランスポーターが同定され、その結合が生化学的に証明された。今後は成熟脂肪細胞の機能と、脂肪細胞の細胞膜におけるアミノ酸取り込みや分泌活性との関与についての解析が待たれ、脂肪細胞機能におけるβKlothoの生理的意義の解明が期待される。
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