研究概要 |
βKlothoは肝臓、膵外分泌組織、脂肪組織に高いレベルの発現を示す膜タンパク質であるが、その生理的意義には未解明の部分が多い。研究代表者らはこれまでに、βKlothoがマウス肝組織においてFGF15、FGFR4と結合し、胆汁酸合成酵素Cyp7a1の発現制御に必須の役割を果たすことを示した。一方、膵外分泌腺、脂肪組織におけるβKlothoの機能は全く未解明である。そこで本研究では以下の解析を行った。(1)膵臓における解析:SDラットに予めカニュラを留置し、リコンビナントマウス:FGF15を静脈内単回投与した。FGF15の投与により膵液量に変化は認めなかったが膵液タンパク質組成には変化が認められた。膵液をSDS-PAGEに展開し、銀染色を施すとFGF15依存性に分泌量が変化する膵液タンパク質、変化しないタンパク質が検出された。(2)脂肪組織における解析:マウス白色脂肪組織の免疫共沈-質量分析実験で同定したβKlotho結合分子群のうち、膜輸送担体であるA,B2分子について、同じくマウスの白色脂肪組織を用いて(1)βKlothoの免疫共沈物をA,Bそれぞれに対する抗体でウエスタンブロットする順方向免沈実験、(2)A,Bそれぞれに対する抗体で免疫沈降した共沈物をβKlothoに対する抗体でウエスタンブロットする逆方向免沈実験を行いA,BのいずれについてもβKlothoとの結合を両方向から証明することができた。次に3T3-L1細胞を定法により脂肪細胞へ分化誘導し、分化過程におけるA,Bの遺伝子発現と基質輸送活性を測定した。その結果、高いレベルでのβKlothoの発現が検出される分化後期においてA,Bの遺伝子発現と基質輸送活性の検出に成功した。以上の解析により膵外分泌機能、脂肪細胞機能におけるβKlothoの生理的意義の一端が明らかとなり、今後の研究の基盤の確立に成功した。
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