代表者は、膵β細胞においてインスリンシグナルがその生存・維持に重要であり、膵β細胞の数とサイズを制御することにより、膵β細胞量を調節することをこれまでに見出してきた。低出生体重児では出生時に膵β細胞量の有意な減少を認めるが、その後いわゆる"catch-up growth"といわれる膵β細胞量の増加を示すことが報告されている。しかし、この低出生体重児の膵β細胞量の変化に対するメカニズムについては、十分に解明されていなかった。そこで平成22年度における本研究では、低出生体重仔の膵β細胞におけるインスリンシグナルの発現・活性化レベルについての検討を行った。代表者らが作製した低出生体重仔モデルでは出生時の膵β細胞量減少および出生後の急激な膵β細胞量増加を呈するものの、24週齢では再び膵β細胞量が減少することが明らかとなった。また膵β細胞におけるインスリンシグナルを検討したところ、若齢期ではインスリンシグナルが亢進しているものの、24週齢の時点ではインスリンシグナルが低下していることがわかった。またインスリンシグナルの変化に関して、インスリンシグナル関連分子の発現量の変化が関与していることが明らかとなった。平成23年度は膵β細胞特異的にインスリンシグナルを減弱させたモデルマウスを用いて、検討する予定である。
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