研究課題
代表者は、膵β細胞においてインスリンシグナルがその生存・維持に重要であり、膵β細胞の数とサイズを制御することにより、膵β細胞量を調節することをこれまでに見出してきた。低出生体重児では出生時に膵β細胞量の有意な減少を認めるが、その後いわゆる"catck-up growth"といわれる膵β細胞量の増加を示すことが報告されている。しかし、この低出生体重児の膵β細胞量の変化に対するメカニズムについては、十分に解明されていなかった。そこで本研究では、(1)低出生体重仔の膵β細胞におけるインスリンシグナルの発現・活性化レベルについて、および(2)膵β細胞特異的PDK1欠損マウスを用いて、インスリンシグナルが膵β細胞のcatch-up growthに果たす役割の検討を行った。まず(1)については、代表者らが作製した低出生体重仔モデルでは出生時の膵β細胞量減少および出生後の急激な膵β細胞量増加を呈するものの、24週齢では再び膵β細胞量が減少することが明らかとなった。また膵β細胞におけるインスリンシグナルを検討したところ、若齢期ではインスリンシグナルが亢進しているものの、24週齢の時点ではインスリンシグナルが低下していることがわかった。膵β細胞量のCatch-up growthにインスリンシグナルが重要と考えられたため、(2)の検討を行った。その結果、膵β細胞特異的PDK1欠損マウスでは対照群と比較して有意に若齢期の膵β細胞量増加が抑制されていることが明らかとなった。以上の結果から、低出生体重仔における膵β細胞量はインスリンシグナルに依存しており、特に若齢期におけるcatch-up growthにおいては、重要な役割を担っていることを明らかとした。
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PLoS ONE
巻: 6 ページ: e23238
DOI:10.1371/journal.pone.0023238