研究概要 |
肥満、糖尿病において生体内鉄量は増加することが報告されており、また内蔵脂肪量と鉄量が相関すること、生体内鉄量は糖尿病発症の危険因子ともいわれている。我々は肥満2型糖尿病マウスを用いて鉄除去の効果について脂肪組織に焦点をあてて解析を行った。鉄キレート薬デフェロキサミン(DFO)の腹腔内投与を連続14日間し、vehicle投与群と比較検討した。DFO投与群では糖負荷試験、インスリン負荷試験によって耐糖能ならびにインスリン感受性の改善が認められた。白色脂肪組織(精巣上体、腸管周囲、後腹膜)重量はDFO投与群において有意に低下しており、病理組織における脂肪細胞径の減少を認めた。DFO投与群においては酸化ストレスマーカーである尿中8-OHdG排泄量の低下、ならびに脂肪組織においてスーパーオキシド産生は低下しており、NADPH oxidase componentsであるp22phox subunitのmRNA・蛋白発現の低下が認められた。また炎症性サイトカインであるTNF-alpha,IL-6,MCP-1の発現も減少していた。糖取り込みに関与しているAkt-IRS経路もDFO投与群において亢進していた。以上の結果から、肥満、糖尿病において鉄除去は脂肪組織における酸化ストレスと炎症性サイトカインの抑制ならびにマクロファージ浸潤軽減につながり脂肪細胞肥大を改善すること、その結果、脂肪組織における糖代謝を改善することが示唆された。また下肢虚血モデルマウスを用いた虚血後血管新生の検討においても、鉄除去剤は酸化ストレスならびにアポトーシスを抑制して内皮細胞活性化をもたらして血管新生を促進することを見いだした。
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