インスリン抵抗性/糖尿病モデルマウスおよびそのコントロールとして、(a)C57BL6マウス(b)aに1日の高脂肪食を負荷したマウス(c)aに3日の高脂肪食を負荷したマウス(d)aに1週間の高脂肪食を負荷したマウス(e)aに11週間の高脂肪食を負荷したマウス(f)db/dbマウス(高度の糖尿病モデル)の6種類のマウスを用意し、各種組織において、シグナル伝達分子やその上流の因子が、モデルマウスでどのように変化しているかを、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロットを用いて調べた。その結果、興味深いことに、代表的なAMPKのリン酸化酵素であるLKB1の発現が、肝臓において、1日の高脂肪食とdb/dbマウスにおいて有意に低下(mRNAレベルにおいて41±2%)していることが分かった。さらに、db/dbマウスにインスリン治療を施して血糖を改善すると、LKB1の発現レベルが回復することも分かった。そこで、ベクターを用いて肝臓にLKB1を強制過剰発現したときに、糖代謝がどのようになるかを調べたところ、db/dbマウスにおいてLKB1をレスキューすることにより、空腹時血糖(コントロール218±18mg/dL対LKB158±17、p<0.05)および糖負荷15分後血糖(442±13mg/dL対355±24)が改善することが示された。この時、Aktおよびその下流のGSK3のリン酸化はLKB1の強制発現において上昇していた。以上のことから、肝臓のLKB1の減少がインスリン抵抗性に関与しており、これを補うことで糖尿病が改善しうることが示唆された。
|