研究概要 |
高脂肪食投与による肥満、内臓脂肪リモデリング、代謝異常におけるヒトC反応蛋白及びTACEの役割について遺伝子改変マウスを用いて検討した。ヒトC反応蛋白過剰発現マウスにおいては野生型マウスと比較し、高脂肪食投与における体重増加は同等であったが、内臓脂肪におけるマクロファージを中心とした慢性炎症は増悪し、インスリン抵抗性や脂肪肝などの代謝異常も高度であった(Kaneko et al,Cardiovasc Res.2011 Aug 1;91(3):546-55.)。またTACEをconditionalにknock-outした遺伝子改変マウスにおいては、高脂肪食投与における体重増加は抑制され、内臓脂肪における慢性炎症も軽度であった。基礎代謝の亢進と共に、脂肪肝やインスリン抵抗性も予防された(Kaneko et al,Circ J.2011 Sep22;75(10):2482-90.)。食生活の欧米化に伴い我が国でも大きな社会問題となっているメタボリック症候群は、内臓脂肪におけるマクロファージを中心とした慢性炎症がその病態の主座をなし、この慢性炎症を契機としてインスリン抵抗性の亢進、脂肪肝の増悪が進む、動脈硬化の促進、心血管イベントという重大な転機につながる。今回の我々の研究は、このようなメタボリック症候群における慢性炎症の役割について新たな知見をもたらすものであり、その病態解明及び新規治療の開拓に寄与するものと考える。
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