研究課題
インスリン抵抗性を有する患者は肝癌を発症するだけでなく、高率に癌が再発し予後不良となる。近年、癌の発症や再発に、bone morphogenetic proteins(BMPs)やインターロイキン(IL)-6を介して誘導される上皮間葉移行(EMT)が深く関与することが明らかとなっている。BMPsやIL-6の発現はインスリンにより制御されており、インスリン抵抗性はこれらの分子を介してEMTに関与すると考えられる。そこで、今年度、我々は、インスリン抵抗性を合併した慢性肝疾患患者におけるEMT関連因子を検討した。はじめに、肝癌の危険因子である非アルコール性脂肪性肝疾患の患者血清(n=12)より、インスリン抵抗性の指標である、homeostasis model assessment for insulin resistance(HOMA-IR)、血清BMP2/4/7およびIL-6値を測定した。HOMA-IR値は11.4±2.9と高値であり、本研究の対象患者はインスリン抵抗性を合併している事が示唆された。同患者における血清BMP2/4/7はそれぞれ、24.5±5.6pg/mL、132±15pg/mL、352±47pg/mLと基準値内であった。一方、血清IL-6値は20.1±0.5pg/mL(基準値4pg/mL)と高値であった。次に、インスリンとIL-6のEMTにおよぼす影響を検討するため、HepG2肝癌細胞株の培養上清にインスリンとIL-6を添加した。コントロール群と比較して、インスリン+IL-6群では紡錘形のHepG2細胞数が有意に増加した。本研究により、非アルコール性脂肪性肝疾患患者は高インスリン血症だけでなく、高IL-6血症を合併している事が明らかとなった。また、インスリンとIL-6は、肝癌細胞のEMTを誘導する可能性が示唆された。
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Journal of Gastroenterology
巻: (in press)
Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism
Reviews on Recent Clinical Trials
巻: 5 ページ: 147-157