本研究では、日本人で最も関連性の高い2型糖尿病遺伝因子KCNQ1の膵β細胞における意義に注目しSNP領域の機能的意義及び膵β細胞におけるKCNQ1と環境因子との相互作用について検討を行った。 1.2型糖尿病遺伝因子KCNQ1責任SNP領域の膵β細胞における機能的意義【SNP領域の機能解析】 1)INS-1細胞のKcnq1ノックダウン条件下における発現変動遺伝子の解析 ラット膵β細胞株INS-1においてsiRNAを用いてKcnq1をknockdownしたところ、グルコース25mMで刺激の際のインスリン分泌が、コントロールに比較して約20%抑制された。また、Kcnq1チャンネル阻害剤を用いてインスリン分泌への影響を検討した結果、siRNAによる作用とは異なり、インスリン分泌の増加を認めた。さらにKcnq1遺伝子のknockdown条件下でKcnq1チャンネルを阻害した結果、インスリン分泌の増加が消失したことから、膵β細胞においてKcnq1チャンネルが機能し、インスリン分泌に関与している可能性が示唆された。現在、詳細に検討を進めている。 2)Kcnq1イントロン上責任SNP領域の機能的領域の探索と機能解析 昨年度は、責任SNPが存在するKcnq1イントロン15配列から保存性の高い領域を5箇所同定し、INS-1細胞からRNAを抽出した後に、RT-PCRにより転写されている候補領域の選定を行った。未だ転写候補領域は同定出来ていないが、今後RT-PCRによる転写候補の同定、シーケンスによる配列決定を行う。 2.2型糖尿病遺伝因子KCNQ1と環境因子の相互作用によるin vitro解析【遺伝子-環境相互作用】 INS-1細胞のKcnq1のknockdown系において、高脂肪食を模した脂肪酸処理を行い、インスリン分泌への影響を検討した。本年度はパルミチン酸刺激24時間後のGSISを様々な条件下で行い、基礎データおよび実験系の構築を行った。今後は、脂肪酸の種類や濃度がGSISに及ぼす影響や、遺伝因子knockdown条件下でのグルコース刺激インスリン分泌応答への影響を検討し、マイクロアレイ解析を行う。
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