本研究では、日本人で最も関連性の高い2型糖尿病遺伝因子KCNQ1の膵β細胞における意義に注目しSNP領域の機能的意義及び膵β細胞におけるKCNQ1と環境因子との相互作用について検討を行った。 1.2型糖尿病遺伝因子KCNQ1責任SNP領域の膵β細胞における機能的意義【SNP領域の機能解析】 1)INS-1細胞のKcnq1ノックダウン条件下における発現変動遺伝子の解析 昨年度、INS-1細胞においてKcnq1のノックダウンがインスリンの分泌を低下させる事を報告した。本年度は、そのメカニズムを探索するためにマイクロアレイ解析を行ったが、関連遺伝子の同定には至らなかった。しかし、Kcnq1の近傍に位置するSlc22a18およびTrpm5の発現がKcnq1ノックダウンにより低下している事が示唆された。Slc22a18とTrpm5をsiRNAによりノックダウンした結果、インスリン分泌が約30%低下する事が示された。以上より、Kcnq1のノックダウンによるインスリン分泌の低下は近傍遺伝子の発現低下に伴う間接的な作用である可能性が示唆された。 2)Kcnq1イントロン上責任SNP領域の機能的領域の探索と機能解析 本年度は、責任SNPが存在するKcnq1イントロン15配列から種間で保存性の高い領域を51箇所同定し、INS-1細胞から調製したcDNAを用いて、転写されている候補領域の選定を行った。その結果33箇所の新規転写産物を同定し、特に発現量が高く、再現性の得られた10箇所において定量PCR法を用いて分析した。その結果、10箇所の新規転写産物が、INS-1細胞において明らかに発現している事が認められた。現在は、新規転写産物のsiRNAを作成し、インスリン分泌に及ぼす影響について検証を進めている。 2.2型糖尿病遺伝因子KCNQ1と環境因子の相互作用によるin vitro解析【遺伝子-環境相互作用】 INS-1細胞のKcnq1のknockdown系においてパルミチン酸処理を行い、インスリン分泌への影響を検討したが、Kcnq1遺伝子抑制とパルミチン酸処理におけるインスリン分泌との関連性は認められなかった。
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