チアゾリジン誘導体がカフ傷害誘導性内膜肥厚を抑制するメカニズムを明らかにするため、野生型マウス、アディポネクチン欠損マウスを用いて、ピオグリタゾンを3週間もしくは8週間投与して検討を行った。まず内膜肥厚部分の血管平滑筋細胞の増殖を検討したところ、3週間のピオグリタゾン投与では野生型マウスでのみ平滑筋細胞の増殖の抑制が認められたが、8週間投与では、野生型マウス、アディポネクチン欠損マウスのいずれでも増殖が有意に抑制された。次に、内膜肥厚部分の炎症性サイトカンについて検討したところ、アディポネクチン欠損マウスで認められたMCP-1、CCR2の発現上昇は、3週間、8週間いずれのピオグリタゾン投与によっても完全に抑制され、さらに8週間投与ではICAM-1の発現上昇も完全に抑制された。さらに血中の脂質について検討したところ、アディポネクチン欠損マウスで認められた高TG血症、高遊離脂肪酸血症は、ピオグリタゾン3週間、8週間投与のいずれによっても野生型マウスとほぼ同程度まで改善した。さらに8週間投与においては、野生型マウス、アディポネクチン欠損マウスともにHDLが有意に上昇していた。以上より、ピオグリタゾンによる内膜肥厚抑制メカニズムとして、短期間投与においてはアディポネクチンを介して主に血管平滑筋細胞増殖を抑制し、長期間投与においてはアディポネクチンを介した作用に加えて、ピオグリタゾンは直接、risk factorや炎症性サイトカイン、血管平滑筋細胞増殖を抑制するといった、アディポネクチン非依存的作用により、カフ誘導性の内膜肥厚を抑制することが示唆された。今回、チアゾリジン誘導体による抗動脈硬化作用のメカニズムを明らかにすることができ、これは、今後のさらなる詳細な分子メカニズム解析につながり、さらに新規の動脈硬化抑制薬の開発につながるものと考える。
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