3T3-L1細胞株において、脂肪分化刺激を与えるとHzf-HuRタンパク質複合体形成が上昇することを明らかにした。この複合体の機能について調べるために、両タンパク質を単独もしくは同時にノックダウンしたところ、HuRノックダウン細胞では脂肪分化には殆ど影響は見られず、C/EBPαの発現も正常レベルに保たれていた。一方、Hzfをノックダウンすると、C/EBPαの発現低下に伴い脂肪分化が抑制された。この表現系はHzf/HuR両者をノックダウンするとさらに顕著になった。しかしながらこのような条件下においてもC/EBPα mRNAのレベルはコントロールと同様に分化刺激により上昇しており、またHzf-HuRタンパク質複合体中にC/EBPαmRNAが検出されたことから、脂肪分化過程においてHzf-HuRタンパク質複合体はC/EBPαタンパク質の発現を翻訳レベルで制御していることが示唆された。 さらに脂肪分化におけるこれらタンパク質の機能について調べたところ、株化された細胞ではHuRタンパク質の発現阻害は影響がないのに対し、初代培養細胞においてはHuRタンパク質が脂肪分化に不可欠な役割を果たしていることを示す結果を得た。株化された細胞では不死化能を獲得するために特定の癌抑制経路が失活することが知られており、このような経路に対してHuRが極めて重要な役割を持つものと思われる。平成23年度はHuRがなぜ初代培養系においてのみ脂肪分化に必要であるかについて解析を行う。 また平成22年度から引き続き生体脂肪組織におけるこれらタンパク質の役割について明らかにするためのモデルマウス作製を行う。
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