研究概要 |
本研究は、エネルギー代謝や発癌における機能的役割に加え、細胞分化においても重要な役割を担うことが明らかにされつつあるエストロゲン関連受容体(ERR)の、細胞初期化ならびに間葉系由来細胞分化における役割を解明することを目的としている。本年度は、まずN末端にFlagタグを付加したERRのcDNAをCAGプロモーター下流に連結したプラスミドを構築し、直鎖状にしたDNAフラグメントをマウス受精卵にマイクロインジェクションすることでERRトランスジェニックマウス作出を行った。一方で、野生型マウス由来胚性繊維芽細胞(MEF)を対象としたiPS細胞誘導系の確立を行った。iPS化の効率上昇を目的とし、Sox2あるいはOct3/4のエンハンサー領域をEGFP遺伝子に連結したコンストラクトを有するレンチウイルスベクター(Hotta, et al., 2009)を予め感染させて安定発現株の樹立を行い、その後初期化因子をレトロウイルスベクターにより強制発現させiPS化を誘導した。樹立したiPS細胞について、EGFP発現、細胞塊形態変化、増殖能、初期胚特異的マーカー遺伝子発現アルカリフォスファターゼ染色などの検討により性質・機能評価を行った。さらに、樹立したマウスiPS細胞の間葉系由来細胞、特に脂肪細胞分化ならびに骨芽細胞分化誘導系の樹立を行った。iPS細胞をhanging drop法により胚様体(embryoid body)を形成させたのち、PPAR_γ遺伝子(脂肪細胞分化)あるいはRunx2遺伝子(骨芽細胞分化誘導)をそれぞれ発現するアデノウイルスベクターを感染させ、さらにそれぞれの細胞系譜へのin vitro分化誘導試薬を添加し分化誘導を行った。形態変化や分化能、遺伝子発現変化等の評価を行うことで、分化誘導効率を検討した。これらの検討から、ERRの細胞初期化ならびに間葉系由来細胞分化に対する機能評価のための研究基盤を確立した。
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