研究課題
本研究では、グレリンが自律神経機能のリズムを調節する機構について分子レベルで明らかにする。これまでに、グレリン遺伝子欠損(GKO)マウスでは、体温の日内リズムが異常であること、明期の平均体温が高いこと、絶食時に野生型(WT)マウスで観察される体温低下が充分でないことを示した。このメカニズムを明らかにするため、今年度は、GKOマウスにおける時計遺伝子の発現リズムおよびホルモンの分泌リズムを中心に解析を進めた。WT群とGKO群のマウスからリズム中枢の視交叉上核とグレリン産生組織の胃を4時間ごとに採取した。これら組織サンプルを用い、per2およびclock遺伝子の発現量を定量PCR法にて解析したところ、いずれの組織においても両遺伝子発現量に群間の差はなかった。また、同時に採取した血液サンプルを用い、ELISA法によってレプチン、インスリン、コルチコステロンの濃度を測定したが、これらホルモン分泌の日内リズムも群間で差は観察されなかった。このことから、GKOマウスの時計遺伝子は中枢および末梢において正常に機能していると考えられた。次に、グレリンの自律神経活動調節作用について検討した。動物が熱産生を行なう場合、褐色脂肪組織(BAT)に投射している交感神経末端からノルアドレナリンが(NA)が分泌されて熱産生が惹起される。この機構にグレリンがどのように関与するのかを調べる目的で、グレリン分泌が著しく亢進する絶食条件下で血漿および褐色脂肪組織を採取した。GKOマウスでは、血漿ノルアドレナリン(NA)含量が高い傾向を示し、BATではNA生合成に関与するチロシンヒドロキシラーゼやドーパミンβヒドロキシラーゼの含量が高い傾向を示した。次年度以降の詳細な解析が必要ではあるが、以上の結果から、グレリンがBAT交感神経末端からのNA分泌に対して抑制性に作用する可能性が示唆された。
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