研究課題
本研究の主要な目的の一つは、グレリンの心臓交感神経抑制作用を応用し、心筋梗塞に伴って発生する致死性不整脈を抑制することである。昨年度の研究により、グレリンノックアウトマウス(グレリンKO)においては、冠動脈結紮による心筋梗塞モデルにおいて、致死性心室性不整脈による死亡が野生型マウス(WT)に比較し有意に高い(約2倍)ことが分かった。当該年度は、そのメカニズムを明らかにするための実験を行った。ウレタン麻酔下にて、心拍変動解析によりWTおよびグレリンKOの自律神経活性を測定したところ、basalにてグレリンKOではWTよりも交感神経活性が上昇していた。冠動脈結紮後30分間の心電図記録をサンプルとした心拍変動解析では、WT・グレリンKOともに交感神経活性が有意に上昇したが、グレリンKOではWTの20倍程度まで上昇した。一方、副交感神経活性は、basalでは両群間に差を認めなかったが、冠動脈結紮後ではグレリンKOにおいてのみ有意な活性低下を認めた。また血中アドレナリン・ノルアドレナリン濃度は、basalでは両群間に差を認めなかったが、冠動脈結紮後ではグレリンKOにおいてのみ有意な上昇を認めた。冠動脈結紮後30分間の全心拍に占める不整脈の割合は、グレリンKOではWTに比べ約5倍多かった。次にグレリンの致死性不整脈抑制作用と副交感神経活性化の関連を調べるため、メチルアトロピンの投与・迷走神経求心路のカプサイシン処置を行ったところ、WT・グレリンKOともに外因性に投与(皮下注)したグレリンの致死性不整脈抑制作用・急性期死亡抑制作用・交感神経活性抑制作用・副交感神経活性増加作用は、いずれも有意に抑制された。なお冠動脈結紮後24時間までに血中グレリン濃度の有意な変動は認めなかった。以上の結果から、心筋梗塞急性期における内因性グレリンの致死性不整脈抑制作用は、交感神経活性抑制・副交感神経活性賦活化によるものであることが分かった。
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