1、ヒトiPS細胞から造血系細胞を効率的に誘導する因子の探索 細胞シグナル経路や転写制御等の活性作用点が明らかにされている低分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、TGFβ阻害剤と一酸化窒素供与体に造血系細胞の誘導促進効果が認められた。また、既存サイトカインのスクリーニングの結果、Activin Aによる顕著な造血細胞の誘導促進作用が確認された。TGFβ阻害剤による造血系細胞の誘導促進効果については特許を申請した(特願2010-193828号)。 2、造血幹細胞誘導因子HoxB4の標的遺伝子の探索 マウスES細胞からの造血幹細胞誘導において重要な役割を担っているHoxB4遺伝子の標的遺伝子の同定を行なった。Microarray解析とChip-on-chip解析の結果より、Runx1、SCL、Gata2、Gfi1、c-Mycといった造血幹細胞の発生や維持に重要な多くの転写因子群遺伝子の発現を、HoxB4が直接制御していることが明らかとなった。これらの結果は、Blood誌に掲載された。 3、造血幹細胞の発生・自己複製において重要性が示されている遺伝子群の解析 造血幹細胞の発生、維持、増幅や自己複製において重要な役割を担っている遺伝子群をヒトips細胞由来の未分化造血細胞に過剰発現させ、造血幹細胞の誘導・増殖効果について解析を行なった。その結果、Sox17遺伝子をヒトips細胞に由来する未分化造血細胞に過剰発現させることにより、未分化造血細胞(CD34^+CD45^+細胞)の恒常的維持とコロニー形成細胞の顕著な増加が確認された。このSox17遺伝子による造血細胞の分化促進作用については特許を申請した(特願2010-193827号)。
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