研究計画(1)「HoxB4による造血幹細胞誘導の分子制御機構の解析」においては、マウスES細胞からの造血幹細胞誘導において重要な役割を担っているHoxB4遺伝子の標的遺伝子の同定を行ない、Microarray解析とChip-on-chip解析の結果より、Runx1、SCL、Gata2、Gfi1、c-Mycといった造血幹細胞の発生や維持に重要な多くの転写因子群遺伝子の発現をHoxB4が直接制御していることが明らかにした。これらの結果はBlood誌に掲載された。 研究計画(2)「造血幹細胞誘導に関与する遺伝子の解析」においては、造血幹細胞の発生、維持、増幅や自己複製において重要な役割を担っている遺伝子群の遺伝子スクリーニングを行なった。その結果、Sox17遺伝子をヒトES細胞に由来する未分化造血細胞に過剰発現させることにより、造血前駆細胞にあたるHemogenicEndothelial細胞(造血能を有する血管内皮細胞、CD34+CD43+CD45low細胞)の恒常的増殖が確認された。また、それらの細胞においてSox17遺伝子の発現をとコロニー形成細胞の顕著な増加が確認された。それらの成果については特許申請(特願2010-193827号)を行い、また論文投稿中である。 研究計画(3)「新規造血幹細胞誘導因子の探索」においては、低分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、TGFβ阻害剤による造血系細胞の誘導促進効果が認められた。それらの成果については特許申請(特願2010-193828号)を行い、また論文投稿中である。 研究計画(4)「ヒトiPS細胞からの造血幹細胞誘導系の確立」においては、研究計画(1)(2)(3)の成果をもとにヒトiPS細胞より造血系細胞を効率良く誘導する系を確立することができた。しかしながら、造血幹細胞の誘導には至っておらず、今後さらなる研究開発が必要である。
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