研究概要 |
Evi1と協調する遺伝子の探索は、Evi1高発現白血病の病態解明の鍵となると考えられる。我々は、レトロウイルスを用いたマウス骨髄移植の実験系を用いて、Evi1とc/EBPβが協調作用して白血病を誘発していることを新規に発見した。Evi1をレトロウイルスで高発現させた骨髄細胞の移植マウスを長期間観察したところ、6-11か月という長い潜伏期を経て、全例が白血病を発症することを確認した。レトロウイルス挿入部位を調べたところ、大変興味深いことに、8匹中6匹でC/EBPβの近傍に挿入されていることを発見した。これらの白血病細胞において、C/EBPβはmRNAレベルでも蛋白レベルでも発現上昇していることを確認した。C/EBPβには、LAP*、LAP、LIPという異なる翻訳開始点を持つvariantが存在するが、そのいずれもが発現上昇していた。 コロニーアッセイおよび移植実験を用いて各variantの作用を調べたところ、LIPは単独で骨髄細胞をtransformする活性があることが、コロニーアッセイおよび移植モデルで明らかとなった。一方、LAPおよびLAP*の単独発現では、移植後の生着が得られず、コロニー形成能も失われることが判明した。 Evi1とC/EBPβの関係を調べるために、レトロウイルスを用いて、各variantとEvi1を同時に骨髄細胞に導入し、マウスに移植した。LIPとEvi1の同時強制発現では、Evi1単独群よりも早期に白血病を発症することが判明した。一方、LAPとEvi1の同時強制発現では、Evi1白血病の発症が遅れた。LAP*とEvi1の同時強制発現の結果については現在解析中である。 本研究により、サイトカイン遺伝子(IL-6、TNF, IL-8, G-CSFなど)の調節を主に行う転写因子であるc/EBPβとEvi1との新たな関係が我々のマウスモデルによって明らかとなった。
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