骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)で高頻度に活性化されている転写因子のEvi1(Ecotropic viral integration site 1)は、白血病の難治性を規定する重要な因子として注目を集めている。本研究では、われわれが世界で初めて作製したEvi1高発現白血病モデルマウスを用いて、Evi1による造血器腫瘍、とくに骨髄異形成症候群の発症機構の本質を明らかにすることを目的とした。これまでの研究により、C/EBPβ(CCAAT/enhancer bindlng protein beta)遺伝子とEvi1との有意な関連性を示す結果を得ていたため、本研究ではEvi1関連白血病発症におけるC/EBPβの役割について、解析を進めた。 c/EBPβのアイソフォームの一つであるLIPとEvi1を同時に導入した骨髄細胞を移植したところ、Evi1単独群よりも白血病発症が早まることを証明し、Evi1とLIPが協調作用することを明らかにした(平均生存期間Evi1単独群:282.9日vs Evi1+LIP群:152.6日)。c/EBPβ単独で高発現させた場合の移植実験も並行して行い、LIP単独では、6カ月以上の潜伏期を経て白血病を誘発することを明らかにした(平均生存期間279.2日)。また、LIP単独で発症した場合、Evi1の発現は上昇しないことを確認した。 c/EBPβとEvi1の協調作用がマウス骨髄細胞での強制発現系で確認されたため、c/EBPβがEvi1白血病発症に必須であるかどうかを確かめるために、C/EBPβのconditiona1ノックアウトマウスの骨髄細胞を用いた移植実験についても実施した。その結果、c/EBPβノックアウト細胞でも、Evilの導入により白血病を発症することが判明したことから、C/EBPβはEvi1のtransform活性には必須ではないことが明らかとなった。
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