急性骨髄性白血病(AML)では、染色体転座の解析から種々原因遺伝子が同定され、遺伝子異常と臨床病態の密接な関与が認められる。一方近年、予後に関わる異常として、遺伝子の量的異常を伴うFLT3異常が同定されたほか、転座を伴わない異常に関してもNPM1やCEBPAの変異が示された。本研究ではAMLの病態の更なる解明と治療標的分子の同定を目指し、超高密度SNPアレイ(オリゴヌクレオチドアレイ)を用いたゲノムコピー数解析システムにより、AML臨床検体100例を対象としたゲノム網羅的遺伝子解析、LOH・片親性ダイソミー(UPD)の解析を行ない、分子生物学的手法と併せAMLの発症進展に関わる遺伝子を探索・同定することを目的とした。 本年度は前年度に続いて、解析を継続した。AMLの臨床検体の骨髄・末梢血凍結検体から抽出したDNAを対象として、超高密度SNPアレイ(GeneChip^(R)100K・500Kアレイ)を用いてアレイ解析を行なった上で、ソフトウェアCNAG/AsCNARアルゴリズムを用いて、計103例のゲノム網羅的なコピー数解析を行なった。この手法により染色体の2本のアレルを区別し、コピー数変化を高精度・高分解能で解析が可能であった。コピー数変化が蓄積した領域、特にUPDや欠失が高頻度に存在する領域には、AMLの発症・進展に関わる遺伝子がある可能性が高く、共通領域にある遺伝子群を同定するべく、遺伝子変異解析や欠損の解析などを行なった。実際30例の検体にUPDが検出され、同領域には高頻度に変異を含む多数の遺伝子異常が同定された。本研究は東京大学医学部倫理委員会に承認を得た研究であり、倫理指針に則り十分な配慮を行なった。
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