研究課題
BAALC(brain and acute leukemia,cytoplasmic)は、予後不良の正常核型急性骨髄性白血病において発現が上昇する遺伝子として知られているが、その機能は明らかではない。当研究においては、誘導的・もしくは組織特異的にBAALC遺伝子を欠失させられるコンディショナル・ノックアウトマウスを作成した。本研究においては、造血幹細胞の未分化性を維持する微少環境を形成するニッチとして知られている骨芽細胞においてBAALCを欠失させるコンディショナル・ノックアウトマウスの作成により、骨芽細胞におけるBAALCの欠失が骨髄移植時のようなストレス下において、造血幹細胞のニッチの機能の障害をもたらすことを明らかにした。さらに、BAALC欠失細胞において発現している遺伝子を網羅的に解析し、BAALC欠失細胞において発現の変化がみられる遺伝子群としてp53遺伝子とその関連分子を同定した。さらに、BAALCとp53の相互作用が示され、BAALCがp53機能を通じて静止期にある造血幹細胞を制御していることを明らかにした。造血幹細胞のニッチとしての骨芽細胞の機能には未だ不明な点が多いが、本研究においてBAALCを通じて造血幹細胞ニッチと静止期造血幹細胞機能の制御の一端が明らかとなった。本研究の成果は、BAALCの造血における生理的役割および白血病の難治性の成立する機序を知る上で非常に重要な知見である。
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