研究概要 |
microRNA(miRNA)は哺乳類では2000年に発見された18-24塩基のsmall non coding RNAである.急性前骨髄性白血病におけるレチノイン酸による分化誘導療法は従来の抗がん剤を用いた"total kill therapy"とは一線を画す画期的な治療法であるが,他の悪性疾患においては有効なものが報告されていない.そこで,難治性急性リンパ性白血病におけるmicroRNAを利用した分化誘導が新規治療法開発に有効であることを示すための研究を開始した. miR-126は造血幹細胞では高発現しているが,pro-B細胞で発現が低下し,B細胞の分化が進むにつれて発現が増加する.miR-126をB-骨髄系前駆細胞が形質転換したMLL-AF4 ALL細胞に導入した場,CD20,CD19等のB細胞分化マーカーの発現が上昇した.cDNAアレイの結果ではmiR-126を過剰発現した場合,B細胞関連遺伝子群の発現が骨髄細胞関連遺伝子群よりも全体として有意に上昇した.またB細胞分化と共に上昇する転写因子の発現はmiR-126を過剰発現させても変化しなかった.次にマウス骨髄細胞にmiR-126を導入/移植した場合,miR-126導入CD19+細胞が,末梢血,脾臓,骨髄において増加した.同様に胎児肝細胞にmiR-126を導入しTsT4ストローマ細胞上で培養した場合,早期にB細胞に分化した. miR-126 B細胞分化促進メカニズムを検討し,造血系分化発生におけるmiR-126の役割を転写因子との関連性を明らかにする実験を行ったところ,miR-126は系列にコミットした細胞ではなく,まだ系列にコミットしていない細胞群に対して働くことが明らかとなり,B細胞に運命が決まった細胞の劇的増殖"Robustness"を誘導することが考えられた。
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