研究概要 |
白血病幹細胞(leukemia stem cells ; LSCs)が、正常細胞に類似した分化過程を経て多彩な腫瘍組織を生み出すこと、従来の治療法に対して耐性であることが示されつつある。BCR-ABL陽性(Ph+)白血病に対して、ABLキナーゼ阻害剤イマチニブが優れた効果を示しているが、治癒の為にはLSCsを適切に同定し、それらを標的とした治療が必要であると考えられている。 関連多施設との共同・前向き研究よって、イマチニブおよび第2世代ABLキナーゼ阻害剤(ダサチニブ・ニロチニブ)治療開始前および経過中(0,3,6,12,18,24ヵ月,更に長期投与後)の幹・前駆細胞分画におけるBCR-ABL遺伝子のリアルタイム定量PCRを行なった。BCR-ABL陽性細胞は、イマチニブ投与後、治療効果良好群においても、幹前駆細胞分画により多く残存する傾向が認められたのに対し、第2世代ABLキナーゼ阻害剤においては、残存に有意な差異は認められなかった(Leukemia, in press)。 免疫不全マウスへ異種移植したPh^+白血病細胞をモデルに、その残存メカニズムと克服治療について検討した。Ex vivoでのイマチニブ処理実験では、CD34+38-分画でより残存傾向を示した。この分画ではBCR-ABLのリン酸化は抑制されていたが、静止期細胞が多く、これが耐性に関わる可能性が示された。PI3K-AKT-mTORシグナルは幹細胞の生存・維持に重要であることが報告されており、mTOR阻害剤(エベロリムス)の併用はex vivoおよびin vivoにおいて有意に白血病の増殖を抑制することを示し(Blood Cancer J 1, 2011)、次世代PI3K-mTORシグナル阻害剤BEZ-235についても、静止期分画を含めた細胞死誘導効果について明らかにした。
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