研究課題
悪性リンパ腫の約70%がB細胞性リンパ腫であり、その予後は抗CD20抗体であるrituximabの導入により飛躍的に改善した。しかしCD5陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)はrituximab導入以後も予後不良であり、臨床的特徴の一つである中枢神経系(CNS)再発/増悪率は診断後2年時点で11.4%と高率で改善がない。その上、リンパ腫のCNS再発に対する確立した標準治療は皆無である。今回の研究はDLBCLにおけるCD5発現の差異をゲノム網羅的な解析を行い、CD5陽性DLBCLの予後不良性の病因、CNS再発の機序を解明することを目的としている。CD5陽性DLBCL、CD5陰性DLBCLの生検凍結試料よりtotalRNAを抽出し、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行った。その結果、supervised法でのクラスタリングではCD5+ DLBCL群とCD5-DLBCL群の2群に分別された。また、ABC DLBCLにおいても検討を加え、CD5+群とCD5-群の2群に分別しえた。この抽出された特異的な遺伝子セットに対して詳細な検討を行い、機能的な遺伝子グループとして捉えるため、Gene ontology (GO)解析、Gene Set Enrichment解析を施行した。その結果、GOカテゴリーの中で、synapseに含まれる遺伝子がCD5+ ABCDLBCLに最も関連していることが解明された。またこれらの遺伝子セットにsynapseに属する遺伝子に加え、中枢神経系に関係した遺伝子が多数含まれており、CD5陽性DLBCLの高率なCNS再発との関係性が示唆された。現在、同定された遺伝子群の蛋白発現を検討し、免疫組織学的検証を進めている。遺伝子発現との再現性、一致性があるか否か、CNS再発予防を可能とする有効な治療開発への応用可能性をめざした検討を行っている。
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Annals of Oncology
巻: (in press)
血液フロンティア
巻: 20 ページ: 1009-1015