研究課題
悪性リンパ腫の最大病型であるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)において、特にCD5陽性(CD5+)DLBCLはrituximab導入以後も予後不良であり、臨床的特徴の一つである中枢神経系(CNS)再発/増悪率は診断後2年時点で11.4%と高く、全く改善がない。この難治群であるCD5+DLBCLの予後不良性の病因、CNS再発の機序を解明するため、前年度、DNAマイクロアレイを用い遺伝子発現網羅的解析を行った。その結果、CD5+DLBCLの大多数がactivated Bcell-like DLBCLに分別されることを確認した。さらにCD5+DLBCLとCD5陰性(CD5-)DLBCLの両者を識別可能な遺伝子セットを同定し、CD5+DLBCLを特徴づける遺伝子群を抽出した。種々の得られたデータセットを詳細に検討を加え、Gene Ontology解析を行ったところ、そのtop geneがSH3BP5であり、神経構成成分あるいは神経機能に関連する多数の遺伝子が含まれることを明らかにした。続いて、抽出されたsignature gene setから同定された、予後及び臨床病態に影響を与えると思われる遺伝子の蛋白発現を検討するため、モノクローナル抗体を用いて凍結切片使用免疫組織化学での検討を行った。正常神経組織の混在を避けるため、リンパ節検体のみを用いてCD5+DLBCLとCD5-DLBCLの両者で検討したところ、SH3BP5抗原のCD5+DLBCL腫瘍細胞における発現が初めて確認された。また神経に関係する遺伝子であるLMO3およびSNAP25においてもCD5+DLBCLで有意に高率に陽性であった。これらは正常ヒトでは神経系組織に特異的に発現し、正常および腫瘍化造血細胞での抗原発現は過去に報告がない。以上の研究成果は難治群であるCD5+DLBCLの予後不良性、CNS再発機序の解明に貢献すると思われる。
すべて 2011
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血液内科
巻: 63 ページ: 34-39
Annals of Oncology
巻: 22 ページ: 1601-1607
DOI:10.1093/annonc/mdq627