研究課題/領域番号 |
22790911
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福島 健太郎 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (70546879)
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キーワード | CBF白血病 / KITV814 / CBFβ-MYH11 / レトロウィルス |
研究概要 |
本来予後良好であるCBF白血病において、KIT変異が加わることにより予後不良となる事が知られているが、本研究は、その予後増悪の分子機構を明らかにする事を目的とするものである。 CBFβ-MYH11のレトロウィルスを作成し、マウス正常造血幹・前駆細胞に導入し、その上で、遺伝子修復能を担う遺伝子の発現が増強していることを確認した。さらにKITV814とCBFβ-MYH11とをレトロウィルスによりダブルで造血幹・前駆細胞に導入する実験系を確立した。ダブルで導入した造血幹・前駆細胞において抗がん剤、酸化ストレス、放射線によって生じる細胞死(アポトーシス)への感受性が、CBFβ-MYH11単独導入細胞に比べて亢進していることを明らかにした。さらに、これらの細胞において遺伝子修復遺伝子の発現について解析した。 また、これらの遺伝子をダブルで導入した造血幹・前駆細胞を正常マウスに移植することにより、白血病モデルマウスを作成することに成功した。CBFβ-MYH11単独導入細胞移植マウスに比べて、KITV814とともに導入した細胞を移植したマウスでは、生存期間の短縮を認めた。これらのマウスの骨髄における白血病細胞の残存を骨髄組織標本の免疫染色により、確認した。これらのマウスにおける抗がん剤、及び放射線照射の影響をin vivoで確認した。また、移植マウスから取り出した造血幹・前駆細胞(白血病幹細胞を含む)をin vitroでの薬剤感受性についても解析した。 さらに、急性白血病患者の検体を用いた臨床研究を行うために、現在、大阪大学医学部附属病院倫理審査委員会に申請の手続きを行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画書においては、22年度で正常造血細胞にダブルで遺伝子導入を行い、アポトーシスやコロニー形成脳の解析を行うこととしていた。さらに23年度でそれらの細胞を用いて薬剤感受性や移植によるモデルマウスの作成を行い、解析を行うこととしていた。しかし、本申請は、22年度の途中から補欠として採択された。そのため、研究の着手がほぼ半年遅れた。しかし、現在の所、23年度までほぼ達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度において、CBFβ-MYH11とKITV814のダブルでの導入造血細胞における遺伝子発現や、p53のタンパク発現についての解析を完成し、さらに白血病モデルマウスでの解析も進める。特に、白血病モデルマウスでは、白血病幹細胞(Leukeia Initiating Cell)の生態(アポトーシスや細胞周期、薬剤感受性など)についての解析を発展させる。また、倫理委員会での承認がおりた後、患者献体を用いた予後因子の網羅的解析も行う。問題点としては、患者献体においてKIT変異の有無について調べた症例が少なく、集積可能症例が少ないことから、少数例での比較となる点である。多施設の検体が入手可能となるよう体制を作りたい。
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