一般に予後良好とされるCBF白血病においてKIT変異が加わることにより予後不良となることが明らかにされてい るが、本研究は、KIT変異による予後増悪の分子機構を明らかにすることを目的とするものである。CBF変異白血病原因遺伝 子とKITの恒常的活性型遺伝子をマウス正常造血幹細胞あるいは前駆細胞に導入し、増殖、分化、生存に及ぼす 影響を検討した。CBFβ-MYH11のレトロウィルスを作成し、マウス正常造血幹・前駆細胞に導入し、その上で、遺 伝子修復能を担う遺伝子の発現が増強していることを確認した。さらにKITV814とCBFβ-MYH11とをレトロウィル スによりダブルで造血幹・前駆細胞に導入する実験系を確立し、造血幹・前駆細胞において抗がん剤、酸化スト レス、放射線によって生じる細胞死(アポトーシス)への感受性が、CBFβ-MYH11単独導入細胞に比べて亢進して いることを明らかにした。さらに、これらの細胞において遺伝子修復遺伝子の発現について解析し、GADD45Aの発現が低下していた。 また、これらの遺伝子をダブルで導入したマウスの造血幹・前駆細胞を正常マウスに移植することにより、白 血病モデルマウスを作成することに成功した。CBFβ-MYH11単独導入細胞移植マウスに比べて、KITV814とともに 導入した細胞を移植したマウスでは、生存期間の短縮を認めた。さらに、CBFβ-MYH11をKITV814とともに 導入した造血幹/前駆細胞の分画においては、CBFβ-MYH11単独導入細胞に比べてp53、p19Arfの発現低下を認めた。以上のことから一般に予後良好とされるCBF白血病においてKIR変異は、増殖文化に影響を及ぼすだけでなく、DNA修復遺伝子の発現、p53、p19Arfの発現低下を介して予後不良に関わっていることが示唆された。
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