がん、特に白血病の再発に大きく関わる白血病性幹細胞において、我々はAurora-Aを標的とした細胞免疫療法の有効性を世界ではじめて証明した。本研究はAurora-Aペプチドワクチン臨床試験によってその有用性を検討し、同時にAurora-A特異的T細胞レセプター(TCR)遺伝子を利用したがん特異的養子免疫療法および分子標的薬との併用がその治療効果を高める上で有効かどうか検討する、すなわちAurora-Aを標的とした包括的がん免疫療法の開発を目的とする。 1.Aurora-Aペプチドワクチン臨床試験を開始し、2例の登録を完了、3例目を準備中である。1例目においては無治療の時と比較し白血病の進行を遅らせることに成功し、さらに、ワクチン4回投与後の末梢血単核球の解析において、Aurora-A特異的T細胞の増加を確認した。2例目においては現在ワクチンを継続投与中である。両症例ともに特記すべき副作用は認めていない。 2.がん細胞を認識する上で重要な働きをするAurora-A特異的TCR遺伝子を利用して、がんに対するAurora-A特異的TCR導入T細胞輸注療法が有用であることを示す基盤的検討を完了した。この中で、Aurora-A特異的TCR遺伝子をCD4^+ T細胞にも導入することで、Aurora-A特異的CD4^+ T細胞も容易に樹立できること、さらにはこのCD4^+ T細胞存在下でAurora-A特異的TCR導入CD8^+ T細胞の機能が増強されることを新たに確認した(BLOOD in revision)。 3.Aurora-A阻害薬を併用することで、抗腫瘍効果の増強を図れるか現在検討中である。 以上より、がんの治癒を目指したAurora-Aを標的とした包括的がん免疫療法の有効性を臨床および基礎的検討から推進した。
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