研究概要 |
本研究の目的は、造血幹細胞増幅器官であるマウス胎仔肝臓の造血幹細胞制御機構に関する申請者独自の知見を基盤にして、造血幹細胞の未分化性維持機構を解明する事である。 1.KS-13シグナル由来造血細胞分化関連因子の機能解析: KS-13シグナルの解析から、胎生期造血幹細胞が赤血球へ分化するにつれて発現が低下する因子、Hmgn2を同定した。Hmgn2遺伝子の機能獲得用vector構築を行い、構築vectorを多能性幹細胞及び白血病細胞株へ導入した。Hmgn2が赤血球細胞分化を抑制する事を明らかにし、論文発表した(Kulkeaw et al., 2012)。 2.細胞外マトリックス刺激による造i血幹細胞分化関連因子の同定と機能解析: 胎生期肝臓は造血細胞,肝芽細胞,類洞内皮細胞より構成される。Dlk-1陽性肝芽細胞をFlow cytometry法で純化・採取し遺伝子・タンパク発現を検討すると、肝芽細胞はFibronectin、Vitronectinなどの細胞外マトリックスとSCF・EPOなどの細胞刺激因子を発現することで造血幹細胞分化を制御する事を明らかにし、昨年度、細胞刺激因子に関して論文発表した(Sugiyama et al., 2011)。細胞外マトリックスに関しては現在論文投稿中である。 肝芽細胞の造血幹細胞分化制御に及ぼす影響をさらに検討する為、肝芽細胞/肝細胞欠失マウス(以下DKOマウス)を用いた実験を行った。胎齢19.5日目DKOマウス肝臓よりCD45/c-Kit/Sca-1陽性造血幹細胞を純化・採取し、放射線照射レシピエントマウスへ移植したところ、コントロールであるWild typeマウス由来造血幹細胞はレシピエントマウス骨髄を再構築(再構築率3%以上)したにも関わらず、DKOマウス由来造血幹細胞は極めて低率に再構築した(再構築率0.5%以下)。マイクロアレイ解析の結果、複数の候補因子の抽出に成功した。来年度以降も解析を継続する予定である。
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