オートファジーは細胞質、もしくは細胞内小器官が二重の脂質膜に取り込まれてライソゾームにより消化、融解されていく現象であり、タンパク質のリサイクリングや飢餓状態でのエネルギー産生に重要と考えられている。オートファジーは各種細胞において栄養飢餓状態などのストレスにより誘導されることが報告されているが、オートファジーのアポトーシスにおける役割はいまだ結論が出ていない。本研究はヒトT cell lineとプライマリT細胞を用いて、エネルギーストレス下でのオートファジーの定量とその役割、特にアポトーシスとの関連についての解析を行うことを主目的とする。抗原刺激後T細胞死異常と全身性エリテマトーデスの関与が示唆されており、SLE患者T細胞を用いて、オートファジー誘導能の異常についても解析を行った。 1.ヒトT細胞におけるGFP-LC3発現系とオートファジー定量系の確立;レトロウィルスベクターを用いてJurkat細胞、ヒトプライマリT細胞にオートファジーに感受性を示す融合蛍光タンパクGFP-LC3をstableに発現する系を樹立した。ウェスタンブロットによるLC3-IIの誘導と比較し、GFP-LC3発現系とフローサイトメトリーがT細胞のオートファジーを高感度かつハイスループットに定量できることを確認した。本方法はヒトプライマリT細胞におけるオートファジー誘導能を簡便に測定できる系であり薬剤の効果、疾患における異常の有無を検討できる極めて有用な系である。 2.1の方法を用いてヒト活性化T細胞は栄養ストレス、エネルギーストレスによりオートファジーが誘導されることが確認された。また、ULK1-dominant negativeの過剰発現により特異的にオートファジーを阻害することによりこれらのストレス下においてオートファジーは細胞死を抑制する方向に働くことが示された。 3.1の方法を用いて全身性エリテマトーデス患者と健常人T細胞の刺激後オートファジー誘導能を検討したが現在のところ有意なさは得られていない。
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