研究概要 |
本研究は、抗原特異的な免疫制御による関節リウマチの治療法を開発することを目的として、平成22年度は抗原特異的なCD4陽性T細胞を同定と機能解析を目的とした。 BiP由来のHLA-DR4エピトープ(BiP336-355)を同定し、これをHLA-DRB1蛋白に結合させてBiP336-355-HLA-DRB1*0405テトラマー(BiP-Tet)を作製した。関節リウマチ患者の末梢血、関節組織におけるBiP-Tet陽性CD4陽性T細胞を、フローサイトメトリーを用いて同定したところ、関節リウマチ患者では末梢血で1%,関節組織で3~5%のBiP-Tet陽性細胞が存在した。一方、健常人末梢血では、BiP-Tet陽性細胞は検出されなかった。更に、末梢血または滑膜組織由来単核細胞のサイトカイン発現を調べたところ、BiP-Tet陽性CD4陽性細胞ではInterleukin(IL)-17を産生する細胞が10%と、BiP-Tet陰性CD4陽性細胞の1%以下と比較して有意に多かった。この傾向は、炎症の主座である滑膜組織でも確認され、滑膜組織ではBiP-Tet陽性CD4陽性細胞の20%がIL-17を産生したが、BiP-Tet陰性CD4陽性細胞では3%と差がみられた。またmRNA発現でも、BiP-Tet陽性CD4陽性T細胞ではIL-17A,RORC(Th17細胞のmaster gene)の発現が亢進していた。 近年、IL-17産生CD4陽性T細胞は関節リウマチなどの自己免疫疾患で向炎症作用、骨破壊促進作用が明らかとなっている。本研究では、関節リウマチ患者で、IL-17を産生している自己抗原特異的なCD4陽性T細胞を同定したが、この細胞集団が滑膜に多く浸潤し関節リウマチにおける自己免疫異常を促進している可能性がある。この細胞集団の抗原特異的な制御により、既存の治療のような免疫系全体の抑制ではなく、病原となる抗原特異的な免疫制御という新しい治療戦略の確立につながると考えられる。
|