本研究は、抗原特異的な免疫制御による関節リウマチの治療法を開発することを目的として、平成23年度は関節炎治療モデルの確立と解析を目標とした。 平成22年度までに、BiP由来のHLA-DR4エピトープ(BiP336-355)を同定し、関節リウマチ患者の末梢血、関節組織におけるBiPエピトープ特異的CD4陽性T細胞の存在と、高いIL-17産生を証明した。 まず、BiP336-355ペプチド内服の効果をみるために、HLA-DR4トランスジェニックマウスにペプチド内服後、BiP免疫を行ったところ、血清抗BiP抗体価は低下し、マウスにおいて経口免疫寛容が誘導しうることがわかった。 関節リウマチのモデルマウスとしてコラーゲン誘導性関節炎(CIA)がある。このマウスはDBAIJ strainを使用するが、このstrainのMHC classIIはH2bであり、ヒトのHLA-DR4と認識するエピトープが類似しているという特徴がある。実際BiP336-355はマウスH2bとも結合することを証明した。CIAマウスのコラーゲン免疫前(予防実験)および関節炎発症後(治療実験)にBiP336-355ペプチドを内服させることで、いずれも関節炎の重症度が下がり、血清抗BiP抗体、抗CCP抗体濃度も低下した。また所属リンパ節のFOXP3陽性T細胞が増加し、制御性T細胞が誘導されることがわかった。 本研究結果により抗原特異的な関節炎の治療法の可能性が示唆された。今後はヒトにおける投与方法、効果の検討が目標とされる。
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