全身性エリテマトーテス(SLE)は多彩な症状を呈する代表的自己免疫疾患である。近年では、多様な免疫抑制剤の開発により、治療選択の幅は広がりつつある。発症要因については遺伝要因と環境要因の両者が関与するとされるが未だ不明であり、予後についても発症時の年齢や自己抗体の発現パターン、腎生検組織像などから予測するが、より積極的な治療が必要かどうかを治療開始前に判断することは困難である。不十分な治療であれば、臓器障害をきたす恐れがある一方、過剰な免疫抑制療法は合併症の増加をきたす。(たとえば、近年のSLEの死因のトップは感染症である。)こうしたなか、低侵襲の検査で新たな診断根拠が得られれば、必要十分な治療の選択が可能となる。本研究では過去に申請者が同定したSLE患者で発現上昇をきたす遺伝子群をもとに作成したSLE特化型DNAチップセットを用い、治療前後におけるSLE患者末梢血における発現遺伝子量を測定し、治療内容・病態を踏まえ、予後因子を同定することを目的としている。さらに、SLEに関する予後規定因子は他の難治性自己免疫疾患の予後にも関連する可能性があり、類縁疾患に対しても応用可能と考える。 平成22年度においては、免疫内科を擁する近畿圏の5施設の協力のもと、未治療のSLE患者のエントリーおよび治療前末梢血の採取・RNAの抽出を行った。現在のエントリー患者数は20人を超えており、同時に性別・年齢を合致させた健常人ボランティアのエントリーも行っている。 まだ予備実験の段階であるが、未治療SLE患者では、末梢血中のインターフェロン関連遺伝子の発現上昇がみられ、過去の報告とも合致した結果が得られつつある。来年度中に測定を終え、多変量解析を行う予定である。
|