関節リウマチ(RA)は,関節滑膜の慢性炎症と滑膜細胞の異常増殖に特徴づけられる自己免疫疾患である。そして、FGF、IGFといった増殖因子は、滑膜細胞の増殖を引き起こす因子として知られている。近年、研究代表者らは、従来1対1と考えられていた増殖因子とその受容体の結合に加え、インテグリンもまた同時に増殖因子に直接結合してその共受容として働くという“two-receptor”モデルを提唱した。 本研究では、増殖因子とインテグリンとの結合から始まるシグナルによって制御されている分子と、その分子の滑膜細胞における機能を明らかにすることを目的として実験を行った。野生型FGF1はRA滑膜細胞の増殖を誘導し、アポトーシスを抑制したが、インテグリン非結合FGF1変異体R50Eはそれらの作用を示さなかった。野生型FGF1で刺激した滑膜細胞と、R50Eで刺激した滑膜細胞の遺伝子発現をcDNAマイクロアレイを用いて比較したところ、EGR-1の発現がR50Eで刺激された細胞では著明に低いことを発見した。さらに、IGF1についても同様の解析を行い、EGR-1の発現がIGF1とインテグリンとの結合からのシグナルによって制御されていることを見出した。 続いて、滑膜細胞におけるEGR-1の役割を明らかにする目的で、siRNAによってEGR-1 の発現を低下させた(EGR-1low)滑膜細胞を作成し、同細胞と野生型滑膜細胞にアポトーシスを誘導したところ、EGR-1low滑膜細胞の方がアポトーシスに陥りやすいことを発見した。 以上、増殖因子とインテグリンとの結合から始まるシグナルは、EGR-1の発現を介して滑膜細胞のアポトーシスを抑制していることが明らかとなった。今後、このシグナルあるいはEGR-1の発現を制御することにより、RA滑膜細胞のアポトーシスを制御して過増殖を抑える治療法の開発につなげたい。
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