研究概要 |
本研究では、気道過敏性に対する神経リモデリングの関与、その治療戦略、また、気道上皮細胞の役割について検討する目的で、慢性期喘息モデルマウスを作製し、神経成長因子(NGF),substance Pの測定や免疫染色での神経分布の検討、気道過敏性と神経分布、NGFとの相関を検討した。マウスはダニ抗原を2回腹腔内注射し、抗原チャレンジを2週、4週、8週の3群に分け行った。最終抗原暴露の3日後に気道過敏性を測定し、BAL、両側肺を回収した。NGFは主に気道上皮や末梢の肺胞上皮から産生され、BAL中のNGF濃度は抗原の容量や抗原暴露の期間依存性に増加した。各マウスの気道過敏性をPC200を用いて計算するとこれらも抗原暴露期間に依存して亢進した。各マウスにおけるNGFとPC200を測定すると優位な正の相関を認めた。病理組織像では抗原を慢性的に暴露させた群で気管支周囲に神経線維の増加、substance Pの発現がみられ、神経線維数はNGF量やPC200と優位な相関を認めた。NGFin vivo siRNAを経鼻的に投与するとsiRNAは末梢の気道上皮に作用し、BALF中のNGFを減少させ、気道過敏性を低下させた。以上から慢性的な抗原暴露により気道上皮から産生されたNGFは気管支周囲の神経線維分布を増加させ、平滑筋収縮物質であるsubstance P産生を増やして気道過敏性を亢進させると考えられた。したがって、気道上皮からのNGF産生は気道過敏性亢進に重要な役割を果たしており、気道上皮細胞からのNGF産生を抑制することは、慢性期の気管支ぜんそくに対する有効な治療戦略と考えられた。
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