研究概要 |
自己免疫において、糖鎖作用の大部分は糖鎖異常に陥った側鎖の部分が影響している。そのため核酸(DNA)、タンパク質に続く第三の鎖状生命分子として、糖鎖分子が大きな注目を浴びている。 本研究ではシェーグレン症候群(SjS)患者唾液、唾液腺内に糖鎖異常に陥ったムチンの存在を証明し、その生理活性などを解明することで、SjSの病因機序におけるムチンの役割を明らかにし、SjSの唾液腺炎特異的な治療薬のターゲットとして、SjS治療への応用を検討した。(京都府立医科大学 倫理委員会申請番号C-907)。 京都府立医科大学耳鼻咽喉科坂口博士の協力のもと、SjS患者より口唇組織を採取した。内科外来においてはガムテストを施行し患者唾液成分を採取した。合計20例の組織と唾液を得ている。 唾液標本をSepharose6-Bを用いてゲル濾過した所、高分子Fractionを認めた。SDS-PAGE 後、PAS 染色を行った。O.D.280 の吸光度の値の上がり方に呼応するように、PAS 染色でバンドが Gel top や濃縮ゲルに検出されている。同様にウェスタンブロッティング後にムチン抗体(Biotin-MLS128/-MLS 132)を用いてムチンの検出を行い、バンドを確認した。更に健常ヒトPBMCでのサイトカイン産生能をELISAで評価した。TNF-α、PGE2ともに有意差を持って、産生能は亢進している事を確認した。患者唾液腺へのムチンの発現について、SjS患者20例の口唇唾液腺生検組織で抗MUC-1,5B抗体,抗MLS128,132抗体を使用して免疫染色を行った。これら全てにおいて、有意差を持って組織内への発現を確認した。 上記よりSjS患者唾液、唾液腺内には糖鎖異常に陥ったムチンが存在し、唾液腺内の炎症に関連していることが判明した。今後は精製を行い、詳細な作用機序の解明が必要とされる。
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