研究課題/領域番号 |
22790945
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
桑原 卓 東邦大学, 医学部, 助教 (40385563)
|
キーワード | ケモカインCCL19とCCL21 / 自己免疫疾患 / インターロイキン23 / 樹状細胞 |
研究概要 |
生体内への異物侵入を監視するためリンパ球は体内を循環する。ケモカインCCL19とCCL21は免疫担当細胞の体内循環(細胞遊走)を直接に制御する。関節リウマチの病態にインターロイキン-17(IL-17)産生性のヘルパーT(Th17)細胞の関与が報告されている。Th17細胞は局所への炎症性細胞の遊走と活性化に重要と考えられている。この研究の目的はCCL19とCCL21によるTh17細胞の成熟機構を解明と関節リウマチ治療法を確立することである。 これまでの検討から、CCL19とCCL21を欠損するC57BL/6を背景とするマウス(B6-pltマウス)は、野生型マウスと比べコラーゲン誘導関節炎を発症しにくく、著明なTh17細胞数の減少が判っている。したがって、これらのケモカインがTh17細胞の誘導をとおして疾病を引き起こしていると考えられる。そこでCCL19とCCL21がCD4T細胞に直接に作用しIL-17産生に導く可能性を検討した。野生型マウスから調製したCD4T細胞をIL-6、IL-23、およびtransforming growth factorβ(TGF-β)存在下で抗CD3抗と抗CD28抗体で刺激しTh17細胞へskewした。この系へCCL19あるいはCCL21を添加したが、培養上清中のIL-17量に変化はなかった。細胞内サイトカイン染色法による解析でもTh17細胞の数と割合にケモカインによる効果は認められなかった。こうした結果はB6-pltマウス由来のCD4T細胞を用いても同様であった。このことから、ナイーブT細胞からTh17細胞に分化する際に必須の微小環境の調整にCCL19とCCL21が関与していると考えた。遊走活性にとらわれることなくケモカインの機能を探索するため、発現遺伝子を調べた。その結果、CCL19とCCL21は樹状細胞を刺激しIL-23を産生することを見出した。実際にB6-pltマウスはコラーゲンで免疫後に所属リンパ節から調製した樹状細胞の産生するIL-23が低下していた。細胞レベルと生体レベルの両面でこれらのケモカインがIL-23産生を制御していることを明らかにした。現在はその産生機序を解析している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲン誘導関節炎の発症とCCL19およびCCL21の機能とを樹状細胞からのIL-23産生に関連づけることができた。これらのケモカインによる疾病の焦点を樹状細胞とIL-23産生に限局できたことを示唆する。樹状細胞からのIL-23産生機構を明らかにできれば、疾患制御に向けた重要な知見となり達成度が高まることが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
樹状細胞をCCL19あるいはCCL21で刺激した際の細胞応答とIL-23産生に到る経路を解析する。一般にこれらのケモカインは樹状細胞の遊走を制御する。この遊走とIL-23産生とが同じ分子機構で調節されているのか否かについて解析する。そこでまず、ケモカインが誘導する樹状細胞内の情報伝達系を網羅的に解析した後、候補を選択しする。その後、RNAiによるノックダウン法を用いて情報伝達経路のIL-23産生能や細胞遊走能への重要性を検討する。IL-23産生に必須の経路を特定した後、その経路が生体内でのTh17細胞の誘導やコラーゲン誘導関節炎の発症にどのような意義を持つかを解析する。
|