成熟したリンパ球は異物侵入を監視するため、血管やリンパ管を介して全身を巡る。ケモカインCCL19とCCL21はリンパ球の体内循環すなわち細胞遊走を直接に制御する。炎症性の免疫疾患にはインターフェロン(IFN)γや腫瘍壊死因子(TNF)αを産生するヘルパーT(Th1)細胞やインターロイキン17(IL-17)産生性のTh17細胞の関与が知られている。本研究では、関節リウマチ治療の新しい側面として、CCL19とCCL21による自己反応性のTh1細胞やTh17細胞の成熟機構の解明を目指す。 CCL19とCCL21を欠損するマウスやこれらに共通する受容体CCR7KOマウスはコラーゲン誘導性関節炎(CIA)を発症し難くい。さらにマウスの系では発症機序が極めて類似する実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)も欠損マウスで発症しなかった。これらのことから、CCL19とCCL21が病原性のTh1細胞やTh17細胞の誘導に関与すると考えた。Th1細胞やTh17細胞の誘導にはIL-12とIL-23が重要であるが、これらのケモカインは樹状細胞を刺激して、IL-12とIL-23の産生を誘導していることが判明した。実際に、CIAあるいはEAEを誘導したCCR7KOマウスの所属リンパ節から調製した樹状細胞はIL-23産生が低下していた。IL-23の産生に焦点をあてて解析を進めたところ、ケモカイン刺激を受けたCCR7の下流で、PI3キナーゼとNF-kappaBを介してIL-23発現が制御されていることが判明した。卵白アルブミン(OVA)存在下でCCL19とCCL21で刺激した樹状細胞は、未刺激細胞に比べてOVA特異的T細胞を効果的にTh1細胞やTh17細胞に誘導した。 以上より、CCL19とCCL21はIL-23産生を介して病原性T細胞の成熟を調節していることが示唆される。
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