関節リウマチ(RA)は滑膜細胞の過増殖ならびに関節破壊といった多様な病態を示し、四肢の自由を奪い運動性の低下を招く非常に重要な運動器疾患である。当研究室ではその滑膜増殖において小胞体ストレス分解(ERAD)に関与するE3ユビキチン化酵素シノビオリンが重要であることを明らかにしている。一方RAではシトルリン化タンパク質が蓄積し、その蓄積したタンパク質に対して産生される抗シトルリン化自己抗体がRAの診断マーカーとして汎用されている。さらに山田らによってシトルリン化酵素Peptidyl-Arginine Deiminases 4 (PADI4)がその病因遺伝子候補として報告されている。これらは滑膜細胞でRAの発症に深く寄与するとされさらにタンパク質修飾に関与する2因子であるがその相互作用は明らかにされていない。本研究ではSynoviolinによるERADシステムの活性化とPADI4のタンパク質の増加によるシトルリン化タンパク質の蓄積の関与に着目し、細胞内における転写後修飾の相互作用を両者に共通の関連因子であるp53シグナルをモデルケースとして検証を行っている。 今年度は細胞内でのそれぞれの転写後修飾に対する機能を検討した。その結果、(1)Synoviolinによるユビキチン化に関してはRAの最終像である組織の線維化に同分子が重要であることを発見した。さらに詳細な解析によりSynovielinがコラーゲンの修飾・細胞内輸送に関与することを明らかにした。(2)シトルリン化に関して、PADI4が細胞内においてシトルリン化酵素活性依存的にユビキチン化を抑制することを明らかにした。またp53およびERAD関連プロモターを用いて転写への影響を検討し、PADI4によるシトルリン化が広く転写調節に関与することが示唆された(未発表データ)。
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