ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)はサイトメガロウイルスと同様に同種造血幹細胞移植後の再活性化により各種感染症をひき起こす。特にHHV-6脳炎は診断が遅れれば短期記憶障害など重大な後遺症残す。このためHHV-6感染メカニズムの解明が望まれる。当該研究機関において、HHV-6は感染細胞の染色体に組み込まれて存在し得ること、そしてそれが遺伝的伝播を受けることを世界に先駆けて発見した。したがって、HHV-6脳炎をPCRで診断する場合、「通常のHHV-6潜伏感染」からの再活性化なのかあるいは「染色体に組み込まれたHHV-6感染」からのDNAを検出しているのかを明確に判別する必要がある。本年度は、このHHV-6の染色体への組み込み機序について解析した。 これまでの報告で、HHV-6の染色体への組み込みはテロメア領域に限局することが示唆されている。FISH法により、HHV-6ゲノムが22番染色体q13のテロメア側に組み込まれていることが証明されている細胞株Katataを解析系に用いた。Katata細胞におけるHHV-6組み込み様式をさらに詳細に解析するため、Katata DNAをPstI制限酵素で消化後、self ligationを行いHHV-6ゲノム末端のDR領域に設定したプライマーによりinverse PCRを行なった。このPCR産物のTAクローニングをして、DNA配列をBLASTサーチにて解析した。今回のinverse PCR法を用いた解析においても、22番染色体q13のDNA配列が結果として得られた。また22番染色体q13のみならず、21番染色体q22のテロメア側のDNA配列も一部得られ、同部位にもHHV-6ゲノム部分が組み込まれている可能性が示唆された。このように、「染色体に組み込まれたHHV-6感染」ではHHV-6は感染細胞のテロメア部位に組み込まれることが確証された。
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