研究課題
申請者らは、最近、世界で最初のHIV-2組換え流行株であるCRF01_ABを同定した(J Acquir Immune Defic Syndr,2010)。これまでHIV-2は病原性が低いと考えられてきたが、申請者らが同定した3例のHIV-2 CRF01_AB感染例は全例が若年齢にもかかわらず、診断時に既にエイズを発症していた。このことは、HIV-2 CRF01_AB株がゲノム組換えを介して、従来のHIV-2株よりも高い病原性を獲得した可能性を示唆している。本研究は、HIV-2 CRF01_AB株のウイルス学的特性を明らかにすることを目的とした。本年度は、分離に成功したHIV-2 CRF01_AB株6クローンの増殖カイネティクスをHIV-2 group A株およびHIV-2 group B株の増殖カイネティクスと共に比較した。具体的には、申請者らの研究室で確立したレポーター細胞株R5-MaRBLEに5×10^6 RNAコピー等量のウイルスをそれぞれ個別に接種し、細胞を洗浄した後、10日間継続培養し、培養上清中に産出されたウイルス量をリアルタイムRT-PCR法でモニタリングした。その結果、HIV-2 CRF01_AB株の6クローンはいずれも同様の増殖曲線を示し、興味深いことに、常にHIV-2 group A株およびHIV-2 group B株よりも10~100倍高いウイルス産出量を維持していた。さらには、HIV-2 CRF01_AB株の6クローンの感染を受けたR5-MaRBLE細胞はいずれも6日目より生細胞数が極端に減少し、活発なウイルス産生に伴って著しい細胞変性効果が誘導されることが判明した。これらの結果は、HIV-2 CRF01_AB株の高い病原性をウイルス学的に示唆するものであり、更に詳細なウイルス学的特性の解明が今後の重要な課題であると推察された。
すべて 2011
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BMC Infect Dis
巻: 11 ページ: 146
doi:10.1186/1471-2334-11-146
日本エイズ学会誌
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