これまでの研究で、福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)の責任遺伝子fukutinの発現解析より、FCMDはSVA型レトロトランスポゾン由来の挿入配列がもたらすスプライシング異常症であることを発見した。この発症機序に基づく治療法確立のため、スプライシング異常を引き起こす標的配列を同定し、20メチルRNAやモルフォリノ等を用いアンチセンス核酸化合物を設計し、ヒト患者由来培養細胞系及び、SVA挿入型ノックインモデルマウス系を用いて治療実験を行った。その結果、架橋型モルフォリノの培養細胞系(リンパ芽球及び筋芽細胞)及び、モデルマウスへの局所投与、及び全身投与において、異常スプライシングが阻止され、正常フクチンが回復した。これらは免疫沈降反応及びウエスタンブロッティング法により正常フクチン蛋白の回復を確認し、また機能的回復は、αジストログリカンのOマンノース型糖鎖修飾の回復をウエスタンブロッティング法で解析することより確認した。一方、低分子化合物ライブラリー(NINDS2)を用い、mRNAレベルでスプライシング異常が是正される薬剤の探求を行った。FCMD患者由来初代筋芽細胞を用いRT-PCR法を用いドラッグスクリーニングを行ったところ、スプライシング異常が是正される薬剤を十数個同定した。これらの結果は今後FCMDのRNA治療の可能性を大きく示唆するものである。
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