小児における腎不全の主要因である先天性腎尿路奇形(CAKUT : Congenital Anomalies of Kidney and Urinary Tract)について、近年その責任遺伝子がいくつか同定されている。しかしこれらの遺伝子を網羅的に解析し、その割合や遺伝子型および表現型にみられる特徴などをまとめた研究は世界的にみても存在しない。本研究では、CAKUTを対象に、これまでに報告されている全責任遺伝子について解析を行い、表現型と責任遺伝子およびその異常との関係について検討し、CAKUTデータベースを構築することを第一の目的とする。また同時にCAKUT発症および重症度を修飾する遺伝子や環境因子の存在についても検討し、CAKUT発症のメカニズムを分子生物学的に解明する。 本年度はCAKUT症例を広く収集し、まず第一にこれまでにCAKUTの責任遺伝子として報告され、さらに変異を有する頻度が比較的高いとされるTCF2、PAX2についてPCRおよび直接シークエンス法を用いて網羅的解析を行った。これまでに7例のCAKUT症例について上記の解析が終了し、うち1例でPAX2の変異を同定し得た。PAX2に蛮異を有した患者は腎症状以外にも眼症状を合併しており、renal-coloboma症候群の表現型であった。 次年度も同様に未解析の症例について検討を進め、変異が同定できなかった症例についてはEYA1、SIX1、SALL1、RETなどその他の遺伝子についてもPCRおよび直接シークエンス法による解析を行う予定である。また加えてMLPA法やRT-PCR法など最新の遺伝子解析技術を駆使し、変異検出率を高めて疾患データベースの構築につなげる予定である。
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