被嚢性腹膜硬化症(EPS)の発症は透析効率の低下とさらにイレウスなど重篤な合併を引き起こし腹膜透析継続ができなくなる。小児の腹膜透析てもEPSを発症することがあり、その病態解明や治療方法の検討は重要てある。EPSは漫性炎症による腹膜中皮細胞なとの腹膜構成細胞の増殖、細胞外基質蛋白(ECM)の産生亢進を介して腹膜肥厚が起こり、また腹膜構成細胞の接着機能亢進により癒着を来たすものと考えられている。一方細胞外基質受容体のインテグリンはECMへの細胞接着、ECMからの情報伝達及び細胞増殖・細胞機能の変化に関与する。腹膜線維化の過程てのインテグリンの役割は不明であり、これを明らかにするため腹膜硬化症動物モデルを作成し、インテグリンの発現と役割を検討した。 1.エタノールを腹腔内投与して作成したEPSモデルラットては腹膜にECM蛋白か増加し、炎症細胞の浸潤が見られた。ECMの蓄積とともに各種インテグリンの発現か増強し、細胞接着斑蛋白も増加した。 2.線維化を促進するサイトカインTumor growth factor-β (TGF-β)で培養中皮細胞を刺激するとECMの増加とともにインテグリンの発現が増強した。 TGF-βにより誘導される腹膜中皮細胞のインテグリンの発現増強が異常なECMリモデリングや細胞増殖に関与し、EPS発症に関連することが示唆された。今後はさらにベクターを用いたインテグリン過剰発現実験での腹膜中皮細胞のECM蓄積状況や細胞接着能の変化などを検討し、インテグリンのEPS発症における役割を明らかにしていく。
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