理化学研究所の協力のもと、臍帯血由来Linage-CD34+造血幹細胞を新生仔期ヒト化マウスに移植し正常造血能をもつヒト化マウスを作成した。まずXLAの病態を反映したヒト化マウスを作成できるか検討を行った。臍帯血からセルソーターを用いてLinage-CD34+CD38-細胞を純化し、これを150cGyの放射線照射を行った新生仔NOD/SCID/IL2r gamma KOマウスに移植した。移植から20~25週頃に各リンパ臓器におけるB細胞分化について解析を行ったところ、正常臍帯血を移植したマウス(コントロールマウス)で正常なB細胞分化が起きていたが、XLA患者の骨髄を移植したマウス(XLAマウス)ではB細胞の分化停止が起きていた。また脾臓細胞をヒトCD40抗体や各種サイトカインで刺激を行い、これらマウスにおけるB細胞の増殖能および免疫グロブリンクラススイッチについて解析を行った。コントロールマウスではB細胞は増殖しIgGなどの抗体を産生したが、XLAマウスではB細胞の増殖は起きず、抗体産生も認められなかった。ヒトXLAの病態を反映したヒト化マウスを作成することに成功した。 さらにレンチウイルスベクターにBTK遺伝子を搭載し、ヒト造血幹細胞に遺伝子導入が可能であるかどうか検討を行った。コントロールとしてBTK遺伝子非搭載GFPベクターをLinage-CD34+CD38-細胞に感染させ、ヒト化マウスに移植したところGFP陽性B細胞が半数以上みられた。しかしXLA患者骨髄由来Linage-CD34+CD38-細胞にBTK遺伝子搭載GFPベクターを導入したところ、B細胞数の増加がみられたが、有意なB細胞分化を観察することはできなかった。現在、BTK遺伝子を導入したXLAマウスで遺伝子導入率について評価を行っている。以上の実験結果をふまえ学術雑誌に投稿を行っている。
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