本研究では、抗酸菌、サルモネラなどの細胞内寄生菌に易感染性を示すMendelian susceptibility to mycobacterial disease(MSMD)のわが国における臨床的特徴および遺伝的背景を明らかにするとともに、既知の遺伝子異常を認めない症例において、関与が疑われる遺伝子の解析を行い、MSMDのさらなる病態解明を進めることを目的とした。 MSMD症例の集積を行い、それらの起炎菌や罹患部位などの臨床的情報の集積と既知の責任遺伝子(IFNGR1、IFNGR2、IL12B、IL12RB1、STAT1およびNEMO)の解析を行ったところ、6症例をIFN-γR1異常症、1症例をIL-12Rβ1異常症そして1症例をNEMO異常症と診断した。これらの症例では、遺伝子異常を認めなかった症例と比較して、抗酸菌の反復感染を起こし、また、骨髄炎症例では病変が多発しているなど、有意に重症例が多かった。さらに、近年、新たにMSMDの責任遺伝子であることが判明した顆粒球やマクロファージおよび樹状細胞の分化に関与するIRF8およびマクロファージによる貪食に関連しているNADPH oxidaseのサブユニットであるgp91phoxをコードしているCYBBの遺伝子解析も行ったが異常を認めた症例はいなかった。 また、遺伝子異常の早期スクリーニング法として、フローサイトメトリーを用いた単球およびT細胞表面の受容体発現の解析やLPS刺激による単球からのTNF-α産生能解析を行った。これらのスクリーニングに加えて、IFN-γレセプターおよびIL-12レセプターからのシグナル伝達にかかわる蛋白のリン酸化を検出することによる新たな診断法も開発した。この方法により細胞表面の分子異常だけでなく、STAT-1のような抗酸菌排除に関与している細胞内蛋白の異常についても詳細にスクリーニングすることが可能となった。このようなスクリーニング法により既知の遺伝子異常の大部分の早期診断が可能になると考える。
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