先天性の赤芽球形成不全であるダイヤモンド・ブラックファン貧血(DBA)では、患者の約25%でリボソームタンパク質(RP)S19遺伝子が変異している。そこで、ゼブラフィッシュのオーソログrpsβ19遺伝子の発現を抑制してDBAモデルを作製し、リボソームの生合成と翻訳機能の変化について解析した。 1)ポリソーム解析:DBAモデルから、ショ糖密度勾配遠心法によりポリソーム(mRNAに複数のリボソームが結合し翻訳活動を行っている状態)を分画した。正常胚と比較すると、RPS19タンパク質が構成成分となる小サブユニットの生合成が減少していることが示唆された。しかし、翻訳能を示すポリソームパターンに大きな変化がみられなかったことから、RPS19が欠損したリボソームも翻訳活動に関与している可能性があると考えた。そこで、リボソームに含まれるRPの定量、定性解析を行うために、ポリソーム画分からタンパク質を精製する方法を検討し、確立した。 2)ポリソームを形成するmRNAを用いたトランスクリプトーム解析:RPS19タンパク質の欠損によって、特定のmRNAに対して、リボソームの翻訳効率が変化している可能性が考えられた。これを明らかにするために、ポリソーム画分に含まれるmRNAのプロファイル作成を試みた。当初、次世代シーケンサーによる解析を予定していたが、必要なmRNA量、コスト、解析時間などを検討し、DNAマイクロアレイでも有効なデータが得られると判断した。ゼブラフィッシュのGeneChip(アフィメトリクス社製)は、約1万5千種類の遺伝子に対するプローブを含む。そのうち、70%の遺伝子の発現を有効に比較できる実験条件を確立した。
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